コロナウイルスと精神科 その6 男性に重症者が多い理由(医療関係者向け)

 新型コロナウイルス感染症で、重症者は男性が多いそうです。喫煙歴の違いというのはあると思いますが、他にも理由が考えられます。

 新型コロナウイルス感染症では、サイトカインストームが起きることが問題です。体中の炎症だといってもいいかもしれません。女性ホルモンがこのサイトカインストームを抑える可能性があるのではないでしょうか。

 私は、過去に統合失調症において認知機能とA/G比(血液の中のアルブミン、グロブリンというたんぱく質の比率)が相関があることを報告しました。しかもそれは、男性だけです。男性の場合、認知機能の低下とグロブリンの多さが相関したのです。一般にグロブリンは炎症があるときに増加します。統合失調症の場合は脳の炎症があると考える研究者がいます。女性では認知機能とA/G比にまったく関係がなかったのです。

 この理由がなかなかわかりませんでした。しかし、偶然見つけることができました。

 統合失調症において、脳の炎症仮説がありますが、そこに働くのが、サイトカインの一種である IL-6(インターロイキン-6)です。HoldenとPakula10)は IL-6 の明確な性質は、エストロゲンによって発現が阻害されることだとし、エストロゲンは統合失調症の発症に対する防御となると考えられるとしています。それゆえに女性は若年では統合失調症の罹患率が男性より低く、中年で脆弱になるのだとしています。

  • Holden RJ, Pakula IS: immunological influences in attention-deficit disorder and schizophrenia; is there a link between these two conditions? Med Hypotheses 45: 575-587, 1995

 女性では統合失調症の発病年齢が遅れること、妊娠中は統合失調症になりにくいこと、40代以降に第2のピークがあることなども、サイトカインとエストロゲンの作用によって説明することも可能かもしれないとも彼らは述べています。

 つまり、女性の場合、エストロゲンが IL-6 の脳への影響を男性と異なり防御するために、炎症機構や抗体産生機能に影響を与えていて、女性ではA/G比と認知機能の間に相関関係がみられないのかもしれないと私は考えました。

 新型コロナウイルス感染症において、どのようなサイトカインが中心に活動するのかは私はよく知りませんが、統合失調症と同じように、関与するサイトカインの暴走が、女性ホルモンがあるために抑えられるということがあるかもしれません。つまり、新型コロナウイルスの重症化率が女性で低いのは、エストロゲンが作用しているのではないかということです。証拠はありません。ただの推測です。

 ついでに、悪性症候群もサイトカインストームが起こると私は考えていますが、やはり、男性に悪性症候群は多く発生します。その理由として、従来は、男性の方が筋肉量が多いからと説明されていました。しかし、そうではなくて、やはり、女性ホルモンがサイトカインの嵐を抑制するからではないでしょうか。これも、証拠はありません。

 悪性症候群の男女比と新型コロナウイルスの死亡率の男女比がほとんど同一だったら興味深いと考えています。

 このようなことを考えていたら、コロナウイルスでもやっぱり、IL-6が関係しているとのことです。ということは、精神症状が出てもおかしくないように思います。先日、NHKスペシャルで、ダイヤモンドプリンセスの中で、わけのわからないことを言ってくる人が増えたと乗員が言ってましたが、隔離されているという拘禁反応だけではなく、IL-6による精神症状という可能性も考えなければいけないと考えます。

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