コロナウイルス精神病?!再燃時にリンパ球低下がみられた症例(医療関係者様向け)

はじめに

 2020年春、コロナウイルスが流行し始めてから、発熱する人が周囲にみられました。しかし、PCR検査はなかなかしてくれませんでした。そのような状況の中で、ウイルス感染症を感知できるとしたらと考えたとき、血液像が良いのではないかと思いました。コロナウイルスに感染したとき、LDHの上昇などと同様に、以前紹介させていただいたように、リンパ球の低下がみられるのは明らかでした。血液像は、血算と同時にできますし、費用も安価です。そこで、2020年4月以降、患者さんの入院時と毎月定期の検査時に血液検査項目に、なるべく血液像も入れることにしました。
 その結果は驚くべきものでした。まず、答えを言ってしまうと、精神症状や問題行動のために新たに入院してくる患者さんの白血球中のリンパ球比率は低下している人が多いことがわかりました。また、入院中に精神症状が悪化して行動制限を開始した人のリンパ球数の平均は低下していました。また、入院中の方で発熱のあった方のリンパ球の平均値も低下していました。
 下の図に示すように、新入院者(赤)、発熱者(オレンジ)、新行動制限者=再燃者(緑)でリンパ球が低下するものが多く見られました。その他(長期入院で比較的安定している人)は、リンパ球は特に低下していませんでした。厳密な統計学的解析(580件の採血結果)は現在進行中です。 

リンパ球低下の図

 さて、発熱者でリンパ球が低下している方は、コロナウイルス感染症ではないかと考えるのが普通です。しかし、多くは一過性で、肺炎の症状が出た方も数人いましたが、内科でみてもらうと細菌性肺炎と診断され、抗生物質などを使用するうちに回復しました。PCR検査がされた方は一人もいません。そこは微妙なところです。
今回は、精神症状の悪化により入院し、入院時にリンパ球が低下していた患者さんが、治療とともにリンパ球数が正常化し、同時に精神症状も軽快して退院した例を紹介いたします。検査日、検査数値以外は改変してあります。

症例A 70代女性 うつ病

 50歳代から睡眠薬を服用していた。60歳前後、物事が頭に入らない、仕事に自信がないと言うようになった。食欲も低下し、当院を初診。内因性のうつ病と診断し、抗うつ薬(三環系)を処方。1-2か月の服用で軽快するが、服薬を中断すると半年で再発することを繰り返した。60歳代の中盤以降、セルトラリン(ジェイゾロフト)を継続すると長期的に安定し数年再発がないことから、徐々に減量の方針とした。しかし、半年ほどして病状が悪化。抑うつ気分、食欲不振、判断不能、泣きたくなる、何もできない、自分はダメだ、死にたいと訴え、2020年の春、初めての入院となった。説得的な精神療法は無効であった。イフェクサーに変更し、37.5mgから徐々に増量した。入院してから21日目に、血液像をはじめて検査した。当時は、まだ、イフェクサーの効果が不十分で、抑うつ気分が強く残っていた。21日目 白血球数 7000 /μlで、リンパ球率は 5%と著しく低下していた。発熱、咳などの身体症状はなかった。入院後1か月頃には、気分も安定したことを自覚し、自責的な訴えはなくなった。31日目の白血球数は 6400で、リンパ球率は17%であり、改善したが正常値の25%にはとどかなかった。精神症状が十分回復して外泊も行った後の 53日目には、白血球数6200、リンパ球率31%と正常域となり、もう一度外泊を行い、入院後69日に良好な状態で退院した。

症例Aのリンパ球比率の推移 緑の部分は正常域 横軸は入院日数、縦軸はリンパ球%

症例B 20歳女性 パーソナリティ障害

 小中学時代から不登校があり,高校は中退した。17歳時、「ストーカーに狙われている」と言い,クリニックを受診。その後,自傷行為,母親への暴力,飛び降りようとする,物を壊すなどから,精神科病院に多数の入院がある。退院すると間もなく情緒不安定になり自傷、過量服薬、家族への暴力などが起こった。しかし、19歳になると、しばらく通院服薬を中断したが半年ほどはアルバイトを継続できる時期もみられた。2020年の春になり、特に心理的な誘因なく、過量服薬による救急搬送が数日間に2回継続し、当院に医療保護入院となった。幻聴、「影」が襲ってくるなど著しい不穏、幻覚妄想状態であった。入院2日目の白血球数は 5100、リンパ球率は 7%と著しく低下していた。感冒症状などの身体所見はなかった。入院時は行動制限も要するほどだったが、抗精神病薬は奏功し、徐々に幻聴や「影」の訴えはなくなり精神症状は軽快に向かった。17日目には、白血球 3400、リンパ球 32%25日目には白血球3800、リンパ球 37%となり、入院から25日後に退院となった。(グラフの形式がばらばらでごめんなさい、エクセルがうまく使えなくて)

症例Bのリンパ球比率の推移 緑が正常域

考察

 2つの症例とも、入院時に極端にリンパ球比率が低く、治療が進むに従って、リンパ球比率が正常化していることがわかります。つまり、精神症状とリンパ球比率が相関していると考えることができます。ほかにも入院中の患者を診てみると、リンパ球数が正常化せず、精神症状も重いままである方もいます。

 また、コロナウイルス感染症の患者でもリンパ球が低下しています。したがって、これらのリンパ球が低下した精神病患者は、コロナウイルス感染症、つまり、コロナウイルス脳炎を起こしていて、そのために病状が再発あるいは再燃したということも一つの説としてはありえます。しかし、新入院患者さんの約4割にリンパ球の低下がみられており、どうみても世間で言われているコロナウイルス感染症の発生率と比較して高すぎます。抗体の保有率が0.1%だった事実を考えると、非常におかしい、何か別なものを測定しているのではないかと思ってしまいます。私の経験では矛盾のある所に真実が眠っていることが多いので、どうでしょうか。やがてあきらかになるでしょうか。

 リンパ球の低下がコロナウイルス、あるいは他のウイルスによるという証拠はありません。でも限りなくそれに近いと思われます。内因性の精神病では、病状の初発、再燃は、内因性によるもので、明確な心因や外因がないことになっています。原因がわからず精神症状が出るので内因性というのだということになっています。ところが、少なくともこの2症例は、リンパ球の低下およびリンパ球数と精神症状との関連から、ウイルス感染という外因が再燃に関与した、あるいは、再燃の原因であるという仮説を支持します。これは、うつ病や統合失調症などのクレペリン時代からの内因性精神病の概念を壊すもので、きわめて重要な問題であると言わざるを得ません。今まで、インフルエンザウイルス、ボルナ病ウイルスなどが、統合失調症などの発症に関与するのではないかという仮説はありました。しかし、今回、コロナウイルスと精神病の再燃とは控えめに言っても、どうも大きな関係があるように思えて仕方がありません。

 では、私の考える仮説を述べさせていただきます。コロナウイルスは、世間で評価されているより実は多くまん延しており、ウイルスが人体に感染した場合、その個人の脆弱な臓器に障害を起こす。長期の喫煙歴など肺にもともと問題があれば、肺炎を起こし、精神病の既往があれば、脆弱な脳に障害を起こし、精神症状を呈するようになる。それはあたかも内因性の再燃のように捉えられてしまい、ウイルスという外因によるとは患者も、家族も医者すらも思わない。ところが、実は、ウイルス感染症が起こり脳に作用し目立たない脳炎を起こし症状や問題行動を呈するのではないでしょうか。

 さて、ここで問題なのは、もし、そういうことがあるとすれば、症例Bにある過量服薬の繰り返し、暴力行為、自傷行為などが、心理的なことによるのでなく、ウイルス感染による脳炎によるかもしれないのです。過量服薬、自傷行為などは、とかく、患者さんの人格的な未熟性や精神科医のコントロールの不全などに帰されていることが多いと思われます。すごく精神科医療の不備を指摘する救急病院の医者の論文をみたことがあります。しかし、実は、過量服薬やリストカットなどもウイルス感染が引き起こしているとしたらどうでしょうか。患者も精神科医も親も、救急部の医師もわからない真実。そんなことがあるとしたら。たぶん、過量服薬の患者も家族も今までは自分を責めていたかもしれませんが、それは間違った認識だったということがありうるのではないでしょうか。情緒不安定性パーソナリティ障害に対する治療者のイメージは決していいものではないことが多いですが、生物学的な要素が強く関与しているとしたらどうでしょうか。今までの常識が崩れませんか。

 いや、そればかりではありません。新たに行動制限(隔離や身体的拘束)を行うことになった患者さんの平均的なリンパ球数は低下していたのです。行動制限を最小化しようとするのはいいのですが、行動制限を行わざるを得ない原因にウイルス感染があるとしたらどうでしょう。呉秀三はもちろんそんなことを思わないで強制的に身体的拘束を禁止したわけですが、実は生物学的な理由があるとしたらどうでしょう。生物学的な理由に気付かず看護者の道義に帰したために必然的に拘束は再び増えてしまったということはないでしょうか。行動制限に生物学的理由があるのなら、生物学的対応によって解決しない限り十分な効果は得られないでしょう。人間の認識には限界があり、そのために多くの問題を誤解しています。そして、限界があることすら忘れてしまい、強く持論を主張してしまいます。

 わが国にも世界にも、統合失調症がウイルス感染や脳の炎症が関与すると考えている研究者もいます。そして、何か精神医学の進歩の一つの形は、実は別の理由があるのに、内因性とされてしまっていることを外因性にしていく作業のようにも思えます。真実は隠されているように思います。なぜ。

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