身体に基礎のある精神症状(精神科関係者向け)

 へんなタイトルです。しかし、シュナイダーの言ったのを訳した日本語も何か変なんじゃなかったかなあ。厳密にいうと、ほとんど全部の精神疾患がそうなんじゃないかなとも思います。内因から外因へ。

 これまで、多くの身体に基礎のある精神疾患をみてきました。ずっと昔、登校拒否になると、学校にいけない他、腹痛が起こったり、昼夜逆転が起こったり、家庭内暴力が起こったりするのが普通でしたが、その中に、脳に器質的な障害のある方がいました。脳の一部の奇形。その方だけでなく、脳の血管障害のもやもや病で登校拒否の子とか脳を髄膜種が圧迫している子とか。それでも、不登校、腹痛、昼夜逆転、家庭内暴力という「結果」は同じでした。これをどう考えるか。考えてみてください。原因は違っても結果は同じ。通過症候群なんかも似ていますね。

 考えることが大切だから、私の答えは言いませんが、精神科に携わる人はよくよく考えてみた方がよいと思います。似たことがほかの分野でもないかなとかも。

 この1か月の間、多くのそいう症例に出会いました。40代のそう状態の女性。頻脈、多弁、過活動、高血圧。まず、甲状腺をみますね。正常値。次にカテコールアミンを調べたら、高値。褐色細胞腫かなと思って内科へ。そしたら、安静を長く保ってから、採血したら、カテコールアミンは正常だし、Ctでも副腎の腫瘍は発見されず、しかし、アルドステロンが異常高値だったとのこと。

 ちょっときつい自殺企図をしてきた方。てんかんで、フィコンパも飲んでいる。フィコンパの効能書きには、自殺企図のことについても記載あり。抗てんかん薬の副作用はたいへんです。昨年は、抗てんかん薬で、TENを起こした方を経験しました。抗てんかん薬を用いたのは、悪性症候群によるけいれん発作のため。ずいぶんとご苦労をおかけしました。フィコンパの患者さんはもちろん、フィコンパをやめて、カルバマゼピンだけにしました。

 また、精神遅滞、てんかんの方。少量の抗てんかん薬でコントロールしていますが、顆粒球減少!。血液像を見ると恐ろしい。しかし、抗てんかん薬を切れるか、変更できるか?

 先日、初発で大変な幻覚妄想状態に急になった方。会社で働いている30歳代の男性。パーキンソン病と言われて、L-dopaが始まっていました。それが原因か、助長してしまったのか。少なくとも関与していることは確かそう。

 プリンペランをそう簡単に使わないでほしい。ハラハラします。ドパミンD2がブロックされる。私の思っている感じだと、抗精神病薬でブロックされるのと違う形でブロックされるようにみえます。悪性症候群になった症例を4例ほど経験しています。そもそも悪性症候群になっていることもわかりにくいのだから。診断基準でみてみましょう。思い込みでだめでしょう。それも、レベンソンの診断基準のように、ひっかかりやすいのを用いましょう。DSMでもいいのじゃないかな。高熱が必須になっている診断基準だと危ないです。そういう診断基準は、研究のためにはいいですよ。しかし、臨床のためにはよくありません。わかりますね?

 そういえば、ご老人で、施設で精神症状のため、リスペリドンを増やした時、発熱して、そのあと、無言になり、不食となった女性。悪性症候群の可能性もあると言ったら、身内の医療関係者でわかってた人もいました。では、それを今どう証明するか?CPKが高かったか? データをもらったら、その時、一過性に400近くまで上がっていました。女性で筋肉も少ないかただから、400でも上昇は上昇。悪性症候群では何千以上だと勘違いしている人もいます。私の調べたところでは1000未満が多いと思います。何万になる、非悪性症候群もいます。しかし、この方、肝硬変があると言われていて、調べたら、高アンモニア血症あり。精神症状に関係すると思われる各種要因あり。どれがもっとも強く関与しているか?

 また、悪性症候群があるとき起こったかどうかを後から証明する他の検査所見は何? 私の経験では、アルブミンの急激な低下です。それから、長期にわたるグロブリンの上昇です。つまりA/G比の変化です。その理由? コロナと同じように、免疫の過剰反応、サイトカインストームでしょう。私の経験した統計学的データから、お話ししているのですが、なかなか信じてはもらえませんので、あまり言わないことにしています。もちろん私の考えが間違っている可能性は十分にありますが。

 しかし、多様に考えてみることは楽しいし、その中で当たることもあるでしょう。解決に至ることもあります。関連の可能性を見つけましょう。(2月17日)

さて、2月19日に、聖みどり病院の喜多洋平(敬称略)がカタトニアについて報告しましたが、私はリモートで自宅で座長をしました。そのときは、座長の役目を慣れないリモートでするのに精一杯でしたが、今、振り返ってみます。昏迷状態で不食。普通はESでしょうが、できない事情もあり、ハロペリドールのためか、肝障害と悪性症候群になりました。最終的にはレキサルティでとても良い状態になったそうです。ハロペリドールを切ってからの悪性症候群だったのですが、このような場合、私の経験ですと2週間から4週間ぐらい悪性症候群があり得ます。レセプターにくっついて離れないような印象を受けます。そこに低アルブミン血症が伴います。この症例でも若いのに 3.5mg/dlまで低下してました。悪性症候群では、低アルブミン血症が起こりますが、これは私はサイトカインのためだと思っています。コロナで有名になったサイトカインストームが悪性症候群ではおこっているのです。悪性症候群とアルブミンとの関係について興味のある方は私の論文をお読みいただけますと幸いです。

 外国の悪性症候群研究者でも間違った方がいますが、悪性症候群は低栄養状態で起こりやすいという考えがあったようです。しかし、そうではないと思います。悪性症候群になると急激にアルブミンが低下するため、もとからそうだったと思ってしまうのです。広島大の山脇が日本で悪性症候群の全国のアンケート調査をしましたが、そこでも精神科医たちは、低栄養状態で悪性症候群を起こしやすいと答えた人が多かったと思います。おそらく勘違いをしているのです。

 悪性症候群の経過中にアルブミンが低下するのは、もう一つの問題を引き起こします。それは、どういうことでしょうか?ハロペリドールなどの抗精神病薬は、90%以上が血液中のアルブミンと結合しており、遊離のハロペリドールは何パーセントにしか過ぎないのですが、それがBBBを通過して、脳細胞に影響を与えます。そこで、アルブミンが急速に低下すると、遊離のハロペリドールが急激に増えてしまい、その結果、悪性症候群を引き起こす、あるいあは、起こってしまった悪性症候群をより悪化させたり、長期化させたり、投与をやめたにもかかわらず、なかなか治らなかったりするのでないかということです。とても、興味深い仮説ではないでしょうか。最近は、悪性症候群を引き起こす薬剤は少なくなってきましたね。でもリスペリドン、インヴェガなどは起こす可能性がありますし、他の薬剤でもないともいえません。

 悪性症候群には早く気が付かないといけません。気が付かないまま、あるいは、受け入れないまま、十分改善してないのに、再び、起こしやすい抗精神病薬を投与してはいけません。神経系の不可逆的な障害が残ってしまいます。しかもそれが悪性症候群のためだとずっと知られない場合もあります。

 悪性症候群に診断基準があるのはとても良いことなのです。悪性症候群への気づきは精神科医にとって弱点なのです。思い込みが強いと、物事を正しく見られないと思います。また、悪性症候群に至らなくても、抗精神病薬の逆説反応とか過感受性などは悪性症候群に近いもののように思います。

 悪性症候群のリスクファクターの一つは、悪性症候群の既往です。何らかの素質と関係しているのでしょう。また、ドパミン系を強固にブロックする抗精神病薬、それから、前にお話したプリンペラン。男性に多いのは筋肉が多いからからではないかと考えた研究者もいます。(2021年2月20日)

 

 

 

Hits: 54