不登校,登校拒否について,ずっと前に研究していました。私が関心を持ったのは,不登校の原因です。しかし,不登校の原因というのはさっぱりわかりませんでしたし,どう話を聞いてもどうしてこの人が学校にいけないのかがわからない例がたくさんありました。むしろ,統合失調症の方が理解しやすいと感じたこともあります。

 登校拒否になると,腹痛や頭痛の訴え,昼夜逆転,家庭内暴力などの症状や問題行動が,だいたいみられました。また,親も同じように不安定になるのも当然ですが同様に共通してみられました。

 そのような中で,はっきりと脳に器質的な異常のある症例にも出会うようになりました。私がみた器質病変を持つ登校拒否は,もやもや病(脳血管の先天性の奇形),Dandy-Walker症候群の亜型,透明中隔腔とヴェルガ腔がある登校拒否の例です。いずれの方も,基質病変を持たない登校拒否と同様に,不登校のほか腹痛や頭痛,昼夜逆転,家庭内暴力などを症状として持っていました。

脳の器質病変と登校拒否の関係

 つまり,原因(といっていいかわからないが)が違っていても,表面的にみられる症状は同じだということに気が付きました。これは私には大変面白い発見でした。(私以外の方は面白いと思わないかもしれません)

 原因が違っても症状は同じであるというのは,ボネファー(K.Bonhoeffer)の提唱した外因反応型と似ています。彼は,急性伝染病,全身疾患,内分泌疾患などに精神症状が伴う場合,その精神症状は基礎疾患の種類に規定されず,違った疾患であっても同じような精神症状がみられるとした。たとえば,せん妄とかもうろう状態,幻覚症,コルサコフ症候群などを挙げているようです。これらは,身体に基づく精神病,症状精神病に関するものですが,同じように,登校拒否についてもこの原理がみられるのをとても面白いと思うのです。

 精神疾患の原因は,本当にわかりません。統合失調症もあれだけ研究され,多くの仮説があるのに,はっきりした原因というのは特定できていない現状です。原因と思われたものが何かの結果であるというような場合もたくさんあったと思われます。

 この原因ということ,あるいは,原因と結果ということは,その後,ずっと私の関心事となりました。原因だと思ったことが原因でない,人によって原因と考えていることが違う,患者も医療者もしばしば原因を間違ってとらえているし,それに気が付くこともない,など精神科領域での原因,結果の関係というのは,驚くべき大きな問題を提示しているように思われます。

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